中学3年の時、生まれて初めて「ラブレタ-」というものを貰った。
ある朝、学校に登校したら 玄関の僕の下駄箱の中に入っていたのだ。
あまりにも突然の事で、当然 予期などしてなかったから、一瞬「何これ?」状態だったが、
「もしや、これが噂に聞くラブレタ-?ってやつ?」
そう思った瞬間に、もの凄い高速で脳内を
「誰からだろ? あの娘かな? いや、あの娘かもしれない…」
等と、いろんな妄想が駆け巡る。
同時に、「もしかしたら 送り主が近くで見ているんじゃないか?」と 周囲をキョロキョロと見回したい衝動と、
「いや、ここは冷静を装って 自然に行動するのがカッコ良いんじゃないか…」
という姑息な考えが 脳内で喧嘩する。
結果、何気なく手紙を制服のポケットに入れて 出来るだけ自然に、そして速やかに その場を立ち去り、人気の無いとこに移動して それからゆっくり考えよう… そう思った。
ドキドキしながら教室に行き、とりあえず 自分の机のところにカバンを置き、心の中で「落ち着け…、自然に振る舞え…」と念じながら 早足でトイレに行き、個室に飛び込んで手紙の封を開けた。
文面は まさにラブレタ-だった。
しかし、差出人が誰か書いて無く そのかわり、「放課後、~公園の瓢箪池のベンチで待ってます」と書いてあった。
もう、その日は 一日中、授業どころじゃ無かった。
「誰からだろ? あの娘かな? いや、あの娘かもしれない…」
という妄想が 駆け巡りっぱなしだった。
そんな長い1日を過ごして迎えた放課後に 僕は学校から歩いて15分ぐらいの所にある 札幌市内でもわりと有名で大きな公園に行き、そこの瓢箪池の横にあるベンチへと向かった。
しかし、ベンチには それらしい女の子はいなかった。
「アセって早く来すぎちゃったかなぁ…」
気恥ずかしく思いながらも 着いちゃったものは仕方が無い。
僕はベンチに座り、池の中を泳ぐ鯉や 漂うアヒルや 楽しそうにボ-トを漕ぐ大学生風のカップルを眺めて過ごした。
しかし…、30分、1時間、2時間… 時は流れるが 一向に、それらしい子は現れなかった。
「もしかして、今日じゃ無かったのかな?…」
そう気づき、手紙を読み直したが 文面に日時は書いてない。
「もしかしたら この手紙 何日も前から下駄箱に入ってたんじゃないか? だとすれば、悪い事しちゃったなぁ…」
そう思い、帰ろうとした時だった。
可愛い女の子が「あのぅ…」と 近づいてきた。
「この娘か? この娘なのか? なんて可愛い子なんだぁ」
至福の時だった。
「もう 俺の全てを君に捧げる」本当に そう思った。
すると女の子が「もし、よろしければ 今から貴方にパワ-を差し上げます」と言う。
僕はキツネにつままれた。
女の子は 僕の額に手のひらを当て、目をつぶって 何やらブツブツ唱えている。
彼女の手のひらは温かかった。
数分の後、彼女は 僕から手のひらを外すと
「今、貴方にパワ-を送りましたから きっと良い事が起きますよ。 もし、良い事が起きたら ここに一度、遊びに来て下さいね」
そう言って 一枚のパンフを僕に渡し、ニコッと笑って立ち去って行った。
渡されたパンフを見ると
「愛のパワ-が人々を幸せにする… 宗教法人『○波の光』」
というタイトルの下に 細かい字でビッシリと「~のおかげで悪霊が去った」とか「授かったパワ-のおかげで北大に受かりました」みたいな感謝の言葉が溢れていた。
僕は呆然としていた。
すると、どこに隠れていたのか 数人の同級生達がゲラゲラ笑いながら現れ、
「ドッキリだよ そのラブレタ-」
「そんな単純に 騙されるかねぇ? しかし…」
なんて言っている。
ようやく全ての謎が解けた。(ジッちゃんの名にかけて…)
「あの女の子も ドッキリ?」
そう聞く僕を 同級生達は激しく笑いながら
「あれは偶然。 でも、良かったね 嘘ラブレタ-のおかげでパワ-貰えて…」
それが、私の人生の中で貰った 最初で最後のラブレタ-になった。
その時に 一番、激しく 腹を抱えて笑っていた同級生の女の子が 後に、僕の嫁になったのは 運命の不思議なイタズラ…なのかもしれない。