2005年05月22日

●機械屋のG


喫茶「職安」の常連客の一人に Gという会社経営者がいた。




彼が経営する会社は とても風変わりな物で 主業はパチンコの機械の販売、取り付けであり、副業的に 当時、流行りだしていた 喫茶店のTVゲ-ム機のリ-ス・販売である。


最近は 機械の性能や材質の向上もあって だいぶ軽くなった様だが、当時の 喫茶店にテ-ブル代わりに設置したゲ-ム機は 1台7・80㎏近い重量があり、それを設置したり、故障した機械を回収してくる際の力仕事が 当初の我々のバイトだった。


G氏は陽気で豪放磊落を絵に描いた様な人で 関西の某有名私大で格闘技系の体育会で主将を務めた人物であり、その手の競技で学生時代には 国内でも必ずベスト4に入る猛者だったという人でもあり、某有名私大の主将という人脈から プロのスポ-ツ選手や団体とも交遊が広い人だったので 札幌で 野球やプロレス、相撲などのイベントがある時は 必ずタダ券を その交友関係から沢山仕入れてきて 我々にくれた人だった。


また、G氏の会社には 我々より少し歳上の技術者でYさんという人がおり、この人が 電子基板や機械の知識がもの凄く豊富な人で 修理やメンテナンスの殆どは そのYさんが全部仕切っていた。


趣味がラジコンという 典型的な技術オタクの人で その当時、国内では珍しかったヘリコプタ-のラジコンを 固定翼機のラジコン・パ-ツを利用して自作する事に挑戦し続けた人だった。


私達が 喫茶「職安」でG氏と出会った頃、「デジパチ」という言葉が広まり始め 今では定番 そして死語となった感がある「777」の元祖 フィ-バ-機が登場しだした頃である。


それまでの主流は「ゼロ戦」とか「グラマン」とか「タイガ-」と呼ばれた羽根物機の初期型や盤面一杯にチュ-リップがある物や、中央に特殊な役物があり、後に「一発台」等と呼ばれた機種だったが、「777」が揃うと 僅か30分で「ドル箱」と呼ばれた大箱1杯分の出玉が出る機械に 客は飛びつき アッと言う間に どのパチンコ屋もデジパチ機を入れ替え始めたのだ。


だから、当時のG氏の羽振りは凄かった。


パチンコの機械の製造が追いつかず、入れ替えの順番を早めるために いろんなパチンコ屋から 定価の値引きどころか プレミア価格の様な上乗せを取り、ホ-ルの改装工事費も 今考えれば ほとんどボッタクリ値段だったのだ。


と言うのは、今ではパチンコ機のメ-カ-間で 機械のサイズの統一化が図られているが、当時は メ-カ-によって、時には 機種によって微妙にサイズが違い、「島」と呼ばれるパチンコ台を並べて設置するコ-ナ-は 機械を設置したり入れ替えたりする際には わりと大掛かりな大工仕事が必要となり、時には 島ごと作り替えたりしたのである。


だが、パチンコの機械を設置…と言っても、設置する際に 機械に余計な傾きをもたせると その後の玉の動きに大きく影響が出る事から 普通の大工なら誰でも良いとされてた訳では無い。


建具師的な能力を持った大工じゃないと安定した設置にならない事から 通称「島大工」と呼ばれる専門大工達の存在があり、「島大工」達は その仕事の関係から 日本国内を転々と、旅から旅へという生活する人達が多く、そういう職人を集めないと出来ない工事だったから 余計にボッタくれたのである。


だから、デジパチ機への入れ替え工事には そういった島大工も数人集められたが G氏は その殆どを 実は我々アルバイトや ごく普通の大工に仕事をさせ、さも 専門の「島大工」ばかりを集めたようにみせかけて 多額の割高な工事費を店から取ったのだ。


デジパチが登場するまでは パチンコと言うのは パチンコ台を調整する「釘師」と呼ばれる職人と 客の一騎打ちの勝負…という感が強かった。


玉がチュ-リップなどの役物に入りやすい釘と 入りずらい釘、午前中は入るけど 時間が経つに連れて どんどん入りずらくなっていく釘や、逆に 遊び続ければ 次第に入りやすくなっていく釘…等 いろんな釘調整の技を釘師は持っていたわけで、そんな 釘の微調整が出玉の数に影響を与えるほど デリケ-トな繊細さを求められたのが デジパチ以前のパチンコ台だったのである。


だからこそ、客として遊ぶ側も その釘の状態を目利きして台を選び、遊ぶという感覚よりも 勝負という感覚が味わえた。


しかし、デジパチ全盛から今日に至り 釘調整の重要さは コンビニで沢山売られている信じられない数のパチンコ攻略雑誌が どんなに熱く語っても 今じゃ殆ど意味が無い。


どこの店も デジパチのチャッカ-に玉が入りやすい様に調整しているし、出玉の可能性は釘調整よりも「設定」と呼ばれるデジタル基盤の出玉設定(確率調整)次第の感が強いからだ。


僅か数千円の元手で 数万円を短時間に稼ぐ事も可能だが、1時間もかからずに数万円を負けてしまうのが可能なのも 今のパチンコなのである。


そこには「勝負」という精神的な楽しみは無く、めざましTVの占いコ-ナ-を早起きして見るのと同じ様な感覚


「本日の アナタの運勢は…」


という意味での 運を占う機械になってしまったのが 今のパチンコ…と 極論と言われるかも知れないが 思ってしまうのである。


G氏は 既に、その当時で 釘調整の重要さが廃れてしまう事を見越していたからこそ、島大工を数人しか招かず、率直な表現を用いれば 手抜き工事で片付けたのである。


当時、私を含む喫茶「職安」に屯していたバイト達は 今、現在 誰一人 パチンコ屋に行こうとする者はいない。


その理由は、当時のG氏のアルバイトで パチンコ屋の裏側を散々、見たからである。


その裏側については また、違う機会に述べようと思う。



記述者:ブタネコ | 掲載日時:2005年05月22日 18:34 このエントリをlivedoorクリップに追加 このエントリーのlivedoorクリップ被リンク数 このエントリーを含むはてなブックマーク このエントリーのはてなブックマーク被リンク数
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