「熱海殺人事件」という話を知っていますか?
これは実際の話では無い。^^
最初は舞台演劇の作品として、その後、角川書店から「小説・熱海殺人事件」となり、映画化もされた つかこうへい氏の 出世作である。
学生時代、読書好き 特に推理小説が大好きだった私は「~殺人事件」というタイトルを見ただけで 大好きな「推理小説」だと思い込み 何も考えずに購入してしまったのだ。
で、あえて申し上げるが この本は推理小説では無い。^^;
しかし、私は この本を勘違いとはいえ、購入して読んだ事をけっして後悔していないし、むしろ良かったとさえ思っている。
と言うのも、この本で私が受けた影響は計り知れないものがあると自覚しているからでもある。
この作品は 是非、読んで貰いたいと思う お奨めの作品なのだが、古本屋じゃないと見つからないほど、希少価値になりつつある。
ネタバレ表現は避け、概要を申せば 熱海の海岸で殺人事件が発生し、その犯人が逮捕され、それを取り調べる刑事と犯人のやりとりが物語の全てなのだが、犯罪者を逮捕・取り調べする警察と 罪から逃れようとする犯罪者… そうであるべき一般的な関係を 視点を変える事によって喜劇に変えてしまうという つかこうへいならではの発想の転換の原点が この物語にある。
今の若者には 過去に実際に起こった「三億円事件」と呼ばれた事件を知っている人が少ないと言う。
だから、もしかしたら そういった点において 時代感のズレを修正する必要があるとは思うが…
「3億円強奪犯は 実は既に逮捕されている。 しかし、あまりにも犯人の実像が情けなさすぎて 天下の3億円強奪犯として 世に送り出すわけにはいかない…」
「なんで こんなブス殺しやがった。 現場を捜査する鑑識の身になって考えろ」
「どうせ捕まるなら もっと世間をアッと言わせて欲しかった」
これが つか氏の描く刑事や犯人の親のセリフである。
「犯人なら 犯した犯罪にふさわしい人物像になれ」
取調室で刑事は そう言い、
「オマエみたいに情けない奴を 立派な殺人犯として検察送致するわけにはいかねぇ」
とまで言う。
私が現在の様に へそ曲がりで 物事を斜めに見るようになったのは 学生時代に この本を読んでしまったからだ。
物事の視点を変えると 当たり前であるはずの事が 実に滑稽に見える様になる。
しかし、その滑稽さを よくよく考えると、現実で ごく一般的、常識的といわれる事のなかにも いろんな矛盾点や問題点が含まれている事に気づけるようになる。
単純にシリアスな世界を ギャグ化した様にして 面白おかしい話… それだけに感じるのでは無く、そこに 物凄く鋭い風刺が潜んでいる事に気づければ この作品は 何倍も面白く興味深いものとなる。
この話は もともと戯曲、つまり、舞台脚本が基だから 実際に、つか氏が演出 風間杜男、平田満、大橋恵理子というキャスティングで 舞台を観た時には 腹の底から笑えたし、いまだに この舞台より笑えた舞台演劇を観た事が無い。
本から全体のスト-リ-を 既に知っていたとはいえ、セリフの内容 飛び交うテンポに 本当に圧倒され、もし舞台で観る事が可能ならば 再見したいと思っているが、近年のつかこうへい氏は その当時の、昔の氏のイメージとは大きく異なってしまった感が強いのと 当時の「つかこうへい事務所」に所属していた役者達の技量の大きさに対抗できる役者が 今の舞台俳優に求めるのが酷というべきものがある。
最近、実に久しぶりに 風間杜男がコント芝居をするのを観たが、昔に見た「熱海殺人事件」の演技を彷彿させるものがあって楽しく、嬉しかった。
もし 古本屋の文庫本コ-ナ-で 角川書店、つかこうへい、「小説・熱海殺人事件」(ちょっと、くすんだ緑色の背表紙)を発見したら 未読の方は 是非、読んでみる事を お奨めする。
物事に対して こういう視点もあるんだ… と、気づかせてくれる一冊である。
ブタネコさんこんにちは。『熱海殺人事件』、『白夜行』がそろそろ読み終わるので、終わったら読んでみたいと思います。以前ブックオフで買おうかと思ったのですが、その時は『蒲田行進曲』を買ってしまいました。私は普段演劇活動をしているのですが、なんかつかこうへいはちょっと古い感じがして避けていたのです。でもこれは面白かった。本を読んだ後、風間平田コンビの映画を見たのですが、めずらしく2回見ましたね。
それから『1リットルの涙』いよいよ最終回ですね。ほとんど見てないんですけど、エキストラのバイトで2回現場に行ったことがあるんですよ!沢尻さんはお人形のように可愛かったですよ~。
★ kuua さん
『蒲田行進曲』も とても面白い作品ですよね^^
でもね、「熱海殺人事件」は 私にとって その何倍も笑えたし、考えさせられた作品です。
もし、よろしければ 読後の感想を教えていただけると嬉しいです^^