2007年03月18日

●華麗なる一族 第8~最終話


「華麗なる一族」の最終話の放送を見終えるにあたり、個人的感想の総論を述べてみたいと思う。




で、以下に述べるような内容の場合 最近では「原作派」「映像派」と分けられるのが流行の風潮があるので 先に断っておくと、私は随分昔に この原作を読んでいるのだが、その読み終えた時に「面白い本」だとは感じたが、絶賛するほどのモノでは無いと思うに至り、ゆえに「原作派」と思われるのは不本意だと言う事。


山崎豊子の著作には「白い巨塔」があり、それを私は傑作だと思っている。


だから、「山崎豊子」の力量は大いに認めるところでもあり、「華麗なる一族」も間違い無く面白い作品だと思っている。


けど、「原作」賛美をしようと思わないのは原作の記述の中で いくつか腑に落ちない設定や記述があったから。


で、原作のどの部分に引っ掛かったのか?と言うと その中でも最たるモノは鉄平が自殺を図り、その死体が安置された警察署に家族がつめかける場面で 警察官(捜査課長)が万俵大介に語る台詞に 以下の台詞がある。



「男らしい、勇気のある死に方でした、ジェームス・パーディという銃にたった一発だけ弾を籠め、一発で命を断っておられます」



この「男らしい、勇気のある死に方でした」という部分がね、私には妙に引っ掛かり やがてはそれが腑に落ちず、違和感となる。


と言うのは 万俵鉄平という長男のキャラクターが実はボヤけていて その終わりに「男らしい」という表現を身内である家族では無く、警察官にのべさせる記述に疑問を感じたのだ。


万俵鉄平は製鉄に夢や大志を抱き、熱い人物である。


財閥の長の長男として育ち、頭脳も明晰である。


が、経営者として有能だったのか?と言う部分に 原作では「有能」の様に描こうとしているけれども、読んでいて私には「有能」とは思えない。


特殊鋼に画期的な発明を行い、企業としての躍進に光りがさす…と言う部分には技術者としての「有能」という部分には納得が出来る。


でも、財務資料をおざなりにし「見せかけ融資」に気づかず、億を越える融資を取り付ける流れも 財閥の子として育った甘さが否めない。


結果的に、会社更生法への流れや 大介を告訴しようとしながら、それも出来ずに終わる様は やはり、「甘さ」を感じてならない。


最終的に 会社が倒産し、地位や仕事を無くし、信頼を寄せてくれた三雲頭取に多大な迷惑をかけるに至ったのが、全て父である大介の策謀だった…と気づき自殺に至る流れの中で 猟銃で自殺する様が「男らしい」という表現に至る事が どうも納得がいかない。


穿った見方で言えば 原作者である山崎豊子が「鉄平は最後は男らしく…」と読者に思わせたくて著述にしようとした結果、その記述に至ったのであろうけど、それは安易でお手軽な手法にしか感じられなかった…という思いが強いのだ。


他にも「気になる事」「腑に落ちない」という部分は多々あるが、細かい事を言ってもキリが無いし、意味も無い。


だから、一点に絞って申し上げると、「華麗なる一族」を映像化するにあたり、上述した警察官の台詞が どの様に扱われるかに注目していたのだが、TV版は なんの疑問も無く警察官(前田吟)に その台詞を言わせている。^^;


万俵鉄平役を「木村拓哉」というキャスティングは判らなくも無い。


TV版の序盤において「製鉄に夢や大志を抱き、熱い」という人物像を見事に好演したと感じているし、それを批判する気持ちなど毛頭無い。


だから、誤解されたくないのは「木村拓哉」を批判する気持ちは私は全く無い…という事、その前提を御理解願った上で TV版「華麗なる一族」を見終えた今、私の認識の上で申し上げたい事は、「木村拓哉」という俳優の固有のキャラクターに「万俵鉄平」という原作における人物像を わざわざ、ねじ曲げて摺り合わせようとした制作者の意図を大いに批判したいのである。


根本的な問題には「華麗なる一族」の原作における主人公って誰?って部分がある。


確かに、長男:鉄平が主人公…って見方も出来なくは無いが、それよりも「大介が主人公」って見方の方が普通であり、タイトルの「華麗なる一族」が表すように 万俵家の家族全てが主人公って見方も出来る。


要は「鉄平を主人公に」と言う風にTV版は原作をねじ曲げた…とも取れるわけで、鉄平を主人公に、かつ キャラクターを「木村拓哉」にマッチする様に摺り合わせて…という意図が良い方向にハマれば結果オーライなのだろうけど、私にはキムタク・ファンを喜ばせるだけの阿りで 一般の視聴者を無視した構成に強く感じた。


例えば、原作においては 鉄平は遺書を遺していないにも関わらず、TV版の最終話で万俵鉄平の遺書が 妻である早苗に届き、それが大介に渡され…というシーンの中で その遺書の文面がナレーションで流れる。


そのナレーションを聞きながら、自殺を図るキムタクや 本当は自分の子だった…と気づき 己の過ちに膝から崩れ落ちる大介…なんて映像を見ると「鉄平が可哀相」と涙が流れる。


でも、それは局所的な部分の話であり「鉄平が」というよりも「キムタク」が「可哀相」と お涙頂戴に嵌められた様な不快感にすら私には映るんだな。


よく考えて見て欲しいのは「何故、鉄平は自殺したの?」という部分。


「男らしく責任を取った」


そういう風に無理矢理、印象づけようとしている様だけど「誰に対してどんな責任を取ったの?」って部分を考えると違和感が生じないか?


「本来、僕は生まれてきてはならない人間だったんだ」


「僕の死をもって 万俵家の忌まわしい事すべてが終わりを告げると信じている」


遺書の文面に そういう台詞を盛り込む事で 自殺の動機を描こうとしているが、それは原作の鉄平では無い。


原作の鉄平が自殺に至る引き金は 三雲が失脚した有様を三雲の娘:志保からの手紙で知り、弟:銀平に電話をかけて 全てが父の策謀だった事を知った事。


つまりは自殺の動機のベクトルが違うのだ。


「鉄平は良い奴だったけど、不運で可哀相な奴だった」


と、TV版「華麗なる一族」では描き、それが いつの間にか、


「夢や大志を抱きながら 誤解が基で、自殺に追い込まれた不運な奴をキムタクが好演した」


という結論付けに嵌め込もうとするTV版の制作者に


「そんな小賢しい手に嵌められてたまるか」


そういう不快感に包まれた最終回の描き方だった…というのが 私の率直な感想だ。




記述者:ブタネコ | 掲載日時:2007年03月18日 23:57 このエントリをlivedoorクリップに追加 このエントリーのlivedoorクリップ被リンク数 このエントリーを含むはてなブックマーク このエントリーのはてなブックマーク被リンク数
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コメント

夜分失礼します. 東村山のゴーシュです.
遅い帰投の折,まますぐに眠れないことがありますが,
今晩はそんな夜です.(笑)

新サイトへのコメントありがとうございました!
事実上運営はすでにしておりますが,本稼動は4月の予定です.
公式告知の前に,リンク更新されたのはブタネコさんで2人目ですよ.(汗)
横溝関連に昇進できるよう,精進します….

さてこの関連の記事は,何度か読ませていただいておりました.
「潜水艦鯉」の記述は大爆笑でした.

実は,小生はこの番組は第1話と,途中何話目かを偶然少し目撃したきりで
見ていないのです. ですから,どうこう言う資格のないことは前提なのですが,
このブタネコさんの記事に誘われてしまい,思わず飛び込んだ次第です.(笑)

小生は,母が山崎豊子さんの大ファンだったおかげで,この手の本が
家に転がっておりました. ですからこの作品の原作も読ませていただいており,
また「季違いじゃが…」の佐分利信主演の東宝作品や一部モデルにされたと
言われる山陽特殊製鋼の事件も,何となく拝見済みでおります.

その上で第1話の感想を,無礼を承知で申せば,
「そんな小賢しい手に嵌められてたまるか」です.(笑)
その昔,違うジャンルの記事でブタネコさんが「滝に打たれろ」のようなことを
おっしゃっていましたが,まさにそんな心境だったと記憶しております.

クリエイティブという精神を忘れて,ひたすら過去の模倣に走る最近の局の
お仕事ですが,山崎さんの作品の中で必ずしもベストと言えない原作にせよ,
この作品に費やした女史の命の削り方を番組制作者はどう解釈したのでしょう.

まず登場人物が「華麗」に見えません.
それと,木村さんの大好きな曲と思われるイーグルスの「Desperado」を
安易に使ったことが不快に思います.この原作をして,木村さんのPVに
使ってしまったのだなと….

「財閥」という,あるいは「華族」という人種が人々に意識されなくなり,
そうした人間たちの仕草,考え方というものが掘り起こさなくては出てこない
時代になりましたね. 単なる今の金持ちとは違うわけですし….
小生はこの作品は銀行の仕組みではなく,その文字通り「華麗なる一族」
という人間をどう構築するか,解釈するかがこの作品に息吹を吹き込む
争点だと理解しております.
調度品や身につけるものを立派にしたところで,何も意味はありませんし,
たとえジーパンにTシャツでも,財閥は財閥のオーラが出ます.

最近,学生時代の親友が九州から出てきた折,「お前知ってるか」と
教えてくれたことがあります.
何かの雑誌で,木村さんが白洲次郎のことを語っていたということです.

おそらくこのお仕事にのぞむに際して,意識したことと想像しています.

もちろん友人は,小生のお仕事の屋号の由来を知っていてのことですが,
これだけ小生が長年,様々な文献を読み漁ってもまだ掴みきれない
白洲正子のだんな様に関して,木村さんが何を語っていたのかは存じません.
ただ老婆心ながら,木村さんもそろそろメッキな発言は控えた方がいいと
思う今日この頃なのです.

こんな夜分に(笑),少々不快な言い回しをお許しくださいませ.
たまには小生もそういう夜があるということで…どうかご勘弁をください.
「華麗パン」を2度も食べたことも含めて….

ちなみに今の小生の「JEEP WAY」の日本語訳は「大和魂」であります.

コメント by ゴーシュ | コメント受信日時 : 2007年03月20日 01:36

★ ゴーシュ さん


>今晩はそんな夜です.(笑)

お気持ちお察し申し上げます。^^ 私にも そんな日がありますから


>新サイトへのコメント

いえいえ、気づいたのと ちょうど御挨拶できそうな記事を拝読したもので つい^^


>横溝関連に昇進できるよう,精進します….

あ、完全に移行が終了されたら修正しようと思っていたのですが…^^;


>まさにそんな心境だったと記憶しております.

これもお気持ちお察し申し上げます。^^

私としましては第1話という事もあって 記事は手控えたつもりだったのと、悪い予感が当たらない事への若干の気持ちが働いておりました。


>クリエイティブという精神を忘れて,ひたすら過去の模倣に走る最近の局の
お仕事ですが

ええ、このドラマのPの1人には その言葉を本当に叩きつけてやりたいですね。^^


>木村さんが白洲次郎のことを語っていたということです.

ほう? そりゃ、知りませんでした。

占い師もどきのババァが白洲次郎を語ったのは知っていたんですけどね^^;


まぁ、最終回まで見通して 仰る通り、木村PVを最初から作っていたのか…と確認し、何が「開局記念番組だ」と片腹痛く思った次第です。

コメント by ブタネコ | コメント受信日時 : 2007年03月20日 04:19

そんなにダメですかねぇ、あれ(笑)
ご指摘に賛同できる部分、数々あります。
男らしい死に方だったという発言は、私もあれ?と正直思いました。
「家族を残して父の愛情を求めながら自ら死ぬのは男らしいのか?」なんて。
でも、記事を読んで思ったことを正直に挙げさせてもらうなら…
鉄平が主人公じゃいけないんでしょうか。って事です。
原作は原作です。
原作を忠実に再現するというのは一つの手法ですが、
視点を別にしてみるっていうのも、ありですよね。
原作をなぞってばかりいたら、それはそれでオリジナリティがないなんて
批判されたりしますし。

誤解しないでいただきたいのは、私はキムタク・ファンではありません。
結末も知っていたので、それに向かってどうやってドラマが進むのか興味があり、
毎週見続けました。
お2人の言うところの「小賢しい手」にひっかかりまくりで、ほぼ満足でした(笑)

コメント by タコ | コメント受信日時 : 2007年03月22日 02:44

★ タコ さん


>原作は原作です。
>原作を忠実に再現するというのは一つの手法ですが、
>視点を別にしてみるっていうのも、ありですよね。
>原作をなぞってばかりいたら、それはそれでオリジナリティがないなんて
>批判されたりしますし。


ええ、タコさんが仰る事も一理だと思います。

だから、「鉄平が主人公」というのはアリだと私も思います。


でもね、「鉄平が主人公」で「男らしい死に方をする奴」という人物像は 原作の中で描かれている鉄平像とは違い過ぎる…と言う違和感を 私は記事で述べた感想を抱いたに過ぎません。

拘るようですが^^; 原作中に「男らしい死に方」って記述がある事じたい なんで?と原作に対しても疑問を感じているぐらいなものですから TV版は そこを拡大利用した感が強いのです。

なので、「鉄平が主人公」という部分だけに批判したつもりは無いのです。

「鉄平を主人公」に変え、その人物像を「男らしい死に方をする奴」に変え、尚かつ「主人公を演じるキムタク固有のキャラクターに摺り合わせる」様に変えた事が「小賢しい」と感じ、不快だ…という意味を申しあげたかった訳でして、これがオリジナルストーリーのドラマだったら この様な批判は間違っても申し上げません。

同時に、原作が「面白い」と思えないクソ小説の場合であれば おもいっきり、設定を変えて その結果、面白いドラマになれば やはり、私は批判など述べません。


しかしながら、この原作は 相当数「面白い」と評価している読者がいる作品である以上、それを役者に擦り合わせて設定を変える…という制作側の行為は オリジナリティ云々ではなく、単なる利用でしか無く、私は批判すべき充分な理由と認識した次第です。


つまり、しつこいようですが「キムタクが主人公の鉄平」というキャスティングに文句は無いのです。

(注:私もキムタク・ヒャッホイではありません^^;)

鉄平というキャラクターが独自に設定され、その役柄をキムタクが演じていた…のなら 記事の様な批判はしません。

木村拓哉には充分以上の演技力があると私は思えばこそ、従来の 他のドラマで人気を博したキムタクが演じたキャラに鉄平像を当て嵌める… そこに 大げさに言えば原作に対しての冒涜や、木村拓哉にとっても ただ利用されるだけで意味の無い出演作 という不愉快になった…って意味でしょうか^^

コメント by ブタネコ | コメント受信日時 : 2007年03月22日 03:49

なるほど・…原作、今度読みます。前田吟警察官の“男らしい”発言、私はもっと単純なところで
違和感を感じました。最近は日常の中で男(女)らしいという言葉をあまり使わなくなった
(一般的にそうですよね?)せいか何をもって男らしいといったのか一言では伝わりにくかったということと、
息子を自殺でなくした遺族に初対面の警官がいきなりこういうことを言うのか?という違和感でした。
原作からひいたセリフだったんですね。
このドラマ、最終回まで、私は見て損はなかったと思いました。あれだけ豪華な出演陣を揃えられ、
キムタクもかっこいいしとくれば見ない手はない、という感じでしたね。視聴率も高くて当たり前かな~と。
ただ、いきなり将軍と肖像画に笑わされ、キムタクもあまりにも“キムタク”過ぎて、
どうみても昭和40年代の鉄鋼マンには見えなくて、あろうことかちょっと失笑してしまったんです。
以前から好きなんですが。なんというか、キムタクが“キムタク”自身を演じている、としか見えなくて、
“この時代にありえないガッツポーズだよ~”とか、”ほらほらあんまり力強く抱きしめたから長谷川京子が
バタバタしちゃったな~”とか。もうここまでくると、彼はどんな役をやっても“キムタク”なのかな~と。
ブタネコさんおっしゃるように、‘原作の鉄平の人物像をキムタクのキャラクターに合わせるように変化させた’ことが
あまり成功したようには見えなかったですが、自殺の場面なんてすごく見ごたえがあっただけに
なんだかもったいないかな~とも思いました。

コメント by ふー | コメント受信日時 : 2007年03月23日 17:45

★ ふ- さん

このドラマって「T○S開局55周年記念特別企画」らしいのですが…

「開局55周年記念」がキムタクにオンブダッコで良いんですかね? この局は^^

コメント by ブタネコ | コメント受信日時 : 2007年03月23日 18:46

「TOS開局55周年記念特別企画」・・・・
そうだったんですか。こちらでは4CHがT○S系列なんですが、ローカルの番組でも
毎週このドラマをとりあげてレビューしてるのがいくつかあって、力はいってるな~と
思ってました。どうりで・・。セットに使われているステンドグラスとかお高い黒檀?かなにかの
座敷机とか、とにかく本物にこだわって関西の小さな会社で作られたものを使っていた、
というようなことも紹介していました。本当にお金のかけ方だけは文句なく「特別」だったんですね。

コメント by ふー | コメント受信日時 : 2007年03月24日 10:09

★ ふー さん

確かに 金はかけてるなぁ…と感じました。

が、鯉やイノシシや肖像画がショボくて台無しだったところが さすがT○S開局55周年記念ですよね

コメント by ブタネコ | コメント受信日時 : 2007年03月24日 16:06
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